チ。地球の運動について 魚豊 3巻

新たな登場人物、女性の研究者ヨレンタが登場。

1章の時とはやはり世界観が変わっていて、天動説が地球が一番、地球が世の中の中心だ、ではなく、この世の中は底辺、だから醜くひどいことばかりが起きる、といった考え方に変わっている。

主人公たちは、そんなことはない、この世の中も希望に満ちている、美しいものも多いのだ、という感情的な部分もあり、単に理性的であったり観測結果だけから天動説をとなえているわけではなさそうである。

また、天動説をとなえる側も、単にC教職者というわけではなく、研究者。その中で時々もしかすると自分が生涯をとして研究してきたものが、前提から間違っており、全く無駄だったのではないかという恐怖をもちながらも、それでも天動説をとなえている、間違っていればさらに優れた天動説を導くための研究をしている、という感じ。

満ちている金星を目にして「過去の積み重ねの先に答えがないなら、真理にとって我々は無駄だったのかもしれん」と言うピャスト伯はその恐怖、悲しさを表してるのだろう。

 

あと、この巻でよかった言葉、ヨレンタさんの「文字は、まるで奇跡ですよ」という言葉。確かに文字を読める人と読めない人がいる時代では余計にそうだったんだろう。自分が今いる時代、場所とは、異なった時代、場所のことを知れる、この時代、場所から超越でき抜け出せるのは、文字があるからこそ。